秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

『また』がこんなにすぐにあるなんて思ってもみなかった私は、とっさに反応ができなかった。

けれどここで隙を見せてはいけない。

毅然とした態度で、何事もなかったかのように振る舞うのが大人というもの。

「明日は予定がありますので」

「じゃあいつならいいんだ。合わせるから時間を作ってくれないか」

三井先生の言葉に耳を疑う。

どうしてそこまで私にこだわるのかがわからない。

からかわれているだけなのかもしれないと思ったけれど、彼の瞳は真剣で、本気でそう言っているのかもしれないと自分に都合のいい解釈をせずにはいられなくなる。

もうこれ以上かき乱されたくはないのに、三井先生の本心が知りたくなってしまう。

「芹沢さーん、こっち手伝ってー!」

「は、はい、すぐいきます」

三井先生に軽く会釈してから私はその場を離れた。

何も考えないようにしながら夜勤で担当する患者の点滴準備をし、輸液セットと繋いでワゴンに載せる。

そして次に夕食用の配薬の準備、明日の朝の内服薬のセットと情報収集。

夜勤の仕事はスタッフの人数が少ない分、管理が行き届かないことでまちがいが起こりやすいので、薬液や内服を扱う時は緊張感が伴う。

そのためダブルチェックが必須なので、準備側もチェック側も気が抜けない。

< 37 / 122 >

この作品をシェア

pagetop