秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「申し訳ございません、そういったお誘いをお受けするわけにはいかないんです」
「どうしてですか?」
「病院の規則で決まっておりまして」
そうでなくても患者の家族とだなんて私には考えられない。
周囲から注目を浴びてしまい、一刻も早くこの場を離れたいけれど、患者の家族を邪険に扱うわけにもいかず、こう返すのが精いっぱいだった。
「院内じゃなければ誘ってもいいんですか? 今日は何時に終わります?」
「いえ、あの、そういうわけではなくて」
「では、どうすればきてくれますか?」
気弱そうに見えるのに、グイグイこられて身構えてしまう。
でも私の言い方が曖昧だったのがいけないのだ。斉木さんの顔は真剣そのもので、私をからかっているつもりはないらしい。
他にどう言おうか思考を巡らせていると、ふと隣に人の気配がした。見上げた先には魅力あふれる端整な横顔。
脳外を専門とするエリート外科医の三井宏太先生だ。年齢ははっきりとは知らないが、恐らく三十代前半〜後半。引き締まった体躯からは男らしさを感じる。
誰もが目を見張るほどの眉目秀麗な彼は、女性患者だけでなくすべての医療スタッフからの注目の的。背も高く上品な雰囲気を合わせ持ち、医師という職業であることからも当然のように女性からの人気が高い。
「申し訳ありません、彼女は今から回診なので失礼しますね」
透き通った張りのあるバリトンボイスに背筋がピンと伸びる。
隣にいられるだけで落ち着かない。