秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
そうこうしているうちに症状は落ち着いたのだけれど、なんだかまた気持ち悪くなってきた気がする。
「具合い悪い?」
「ううん、大丈夫だよ」
「本当に? 無理してない?」
「お腹空いちゃったからかな、低血糖なだけだよきっと」
「そう? 無理しないでね」
「ありがとう」
明るく振る舞う私を見て心配顔を浮かべる美咲。
楽しい時間を過ごすはずが、私のせいで台無しになったのでは申し訳ない。
無理をしてでも食べなければ、そう思ったのがまちがいだった。
午後から街を散策していると、必死に胃に詰め込んだオムライスが逆流してきそうになった。
「ちょっとお手洗いにいってくる」
美咲にことわり、お手洗いに駆け込んだ。
何か悪い食べものにでもあたったのだろうか。
それともただの腸風邪?
ストレス?
「ねぇ、まさかとは思うけど妊娠ってことはないよね?」
吐き気が落ち着き個室をでたところで、心配して様子を見にきたであろう美咲の口からありえないワードが飛びだした。
「妊、娠……?」
まさかそんなはずはない。
だけど今月は生理がきていないのも事実。
ふと最後の生理はいつだったかなと記憶を辿った。
あまりにも多忙だったせいですぐには思い出せない。
「やだ、半分冗談のつもりだったんだけど。まさか本当に?」
怪訝に眉を寄せる美咲。
「ま、まさか! そんなのありえないって」
私はとっさに否定していた。
「だ、だよね」
私の言葉を美咲が信じてくれたかどうかはわからなかったけれど、それ以上追求されることはなかった。