秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
産婦人科を受診し妊娠の確定診断を受けたのは、それから数日経ってからだった。
幸いにもつわりはそこまで重くなく、空腹にさえならなければ仕事に支障をきたすことはない。
白衣のポケットに飴やグミなどのお菓子を常備し、空腹になるのを防ぎながらいつものように棟内を忙しなく行き来する。
「芹沢さん」
名前を呼ばれて反射的に顔を上げると、そこには以前脳梗塞で入院していた斉木さんの姿があった。
斉木さんはリハビリに取り組み、一人での杖歩行が可能になるまでに回復した。
顔色を見る限りでは退院してからの方が調子は良さそうだ。
「入院中はずいぶんお世話になったねぇ」
「とんでもない。ますます元気になられて見違えちゃいましたよ」
患者が元気になって退院していくのは嬉しいし、回復する過程にはとてつもないやりがいを感じる。
「今日はリハビリですか?」
「そうなんだよ、もうすっかり元気なんだけどねぇ」
ニコニコとした笑顔が可愛らしい斉木さん。
そんな斉木さんの後ろから若い男性が顔を見せた。
「もうばーちゃんってば、一人で勝手に歩いちゃだめじゃないか。探したんだからな」