秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
ぶつくさ言う彼の顔には嫌というほど見覚えがあった。
「あ、どうもお久しぶりです。すみません、ばーちゃんが」
「こんにちは。いいえ、大丈夫ですよ」
私はお得意の笑みを貼りつけ、何事もなかったかのように振る舞う。
「ほら、ばーちゃんそろそろ時間だから行かなきゃ」
「そうだね、じゃあまたね芹沢さん。他のスタッフさんにもよろしくね」
「はい、お伝えしておきます。リハビリ頑張ってくださいね」
二人の背中が遠ざかっていくのを見てホッと胸を撫で下ろす。
「さ、私も仕事仕事!」
気を取り直して途中だった患者のケアへと向かう。
だけど終わって病室をでると、そこには先ほどわかれたばかりの斉木さんの孫が立っていた。
「あの、まだ何か?」
本来なら病棟への出入りはナースステーションへの申告制で、面会者以外の立ち入りはできなくなっている。
しかし厳重に管理されているわけではなく、鍵がかかっているわけでもないので、割と簡単に誰でも出入りできてしまう。
「芹沢さんにお話があるんです」
「どのようなご用件でしょう?」
できるだけ淡々と感情のこもっていない声で答える。