秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

実は彼に食事に誘われたのは一度だけではなく、斉木さんの退院まで毎日のように隙を見つけては声をかけられたのだ。

最初に三井先生に邪魔をされたからなのか、それからは人目を盗んで私が一人の時に必ず現れた。

退院してからはそれもパタリとなくなったけれど、何度断ってもめげない彼を無下にもできず、私は困り果てていた。

そんな経験から斉木さんの孫を見るとどうしても身構えてしまう。

「もうばーちゃんは退院したから、今僕たちは患者とスタッフっていう関係じゃないですよね。だから、今度こそ僕とデートしてもらえませんか?」

「……ごめんなさい」

「たった一度だけでいいんです!」

何を言っても、どうお断りしても、斉木さんの孫は私に頭を下げ続けた。

私はそこまで想ってもらえるようないい女なんかじゃない。

「本当にごめんなさい。仕事があるので失礼しますね」

「待ってくださいっ、今日こそは!」

とっさに腕をつかまれ、あまりの力強さに反動で振り返らされる。

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