秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

激務を終えて鉛になった足を動かしながらロッカールームへ向かっていると、不意に立ちくらみがして思わず壁に手をついた。

お、お腹空いた……。

業務が忙しかったのもあって間食するのをすっかり忘れていた。

何か口に入れてしばらく休めばすぐに回復するだろう。

そう思ってポケットの中を探ったけれど、食べ切ってしまっていたのか肝心の食べものが見当たらない。

ロッカールームにいけばバッグの中に飴があるけれど、ここからでは少し距離がある。

今すぐ何か食べたいのに、それまで持つかな。

ここでしばらくこうしていればよくなりそうな気もする。

まだまだ体の変化に慣れない妊娠初期の段階で、普段よりも考えや行動が慎重になる。

無理してしまいがちな私でも、お腹に命が宿っているという特殊な状況ではそうもいかない。

「大丈夫か?」

背後から突然声をかけられ驚きのあまり肩がビクンと揺れる。

顔を見なくても声と雰囲気で三井先生なのがわかり、身動きができなくなった。

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