秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「具合いでも悪いのか?」
優しく声をかけられ、すべてをさらけ出したい気持ちにかられる。
でも、だけど、三井先生に頼るわけにはいかない。
私は拳を握りしめると、顔を上げ精いっぱいの微笑みを作った。
「ちょっと立ちくらみがしただけなので大丈夫ですよ」
「真っ白な顔して、とてもそうは見えないけどな」
怪訝に眉根を寄せながら、鋭く、それでいてどこか温かみのある優しい瞳が核心を突いてくる。
とっさの切り返しができず、押し黙るしかできない自分が情けない。
「とにかくこっちへ」
「いえ、あの」
「そんな状態で帰せるわけないだろ。医者からの助言は素直に聞き入れた方が体のためだ」
「……」
そこまで言われてしまっては、返す言葉が見つからず素直になるしかなかった。
「少し横になれば楽になるだろう。必要なら点滴もするけど」
「大丈夫、です」
八畳ほどの宿直室は簡易ベッドとテレビ、テーブル、電気ポット、パソコンが置かれているだけの無機質な空間だった。
「こっちでゆっくりしていろ」
「すみません」
案内され、恐る恐る簡易ベッドの上に腰かける。