秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
三井先生のせいでさらに周囲の視線を集めてしまっている。目立つのが当然だと思っている彼は動じていない上に、ニッコリ微笑んで大人の余裕がうかがえる。
「いくぞ」
「え、あ」
手首をつかまれ、振り返らされた。そして勢いよく引っ張られナースステーションをあとにする。
「僕、諦めませんからっ!」
最後に聞こえたその声に耳を塞ぎたい思いだった。実は患者や患者の家族から好意を持たれるのは今回が初めてではない。
半年前まで勤務していた同病院の整形外科病棟では若い男性の入院患者が多く、声をかけられるといったことがたびたびあったからだ。
職場でそのような対象として見られているのが耐えられず、業務にも支障をきたすという理由で自ら異動を願いでた。
そのような経緯で脳神経外科へきたというわけなのだが……。
また同じようなことが起こってしまった。
特定の患者を特別扱いしているわけではなく、普通に、ごく一般的に業務をこなしているだけだというのに、これでは私の素行のせいだと思われても仕方がない。
どうにかしたいけれど、どうすればいいのやら。
「かなり思い詰めてるみたいだな」
え?
ハッとしたのは自分が置かれている状況を思い出したから。