秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
院内であるとはいえ、普段いる病棟とは違った静かな空間に緊張が走る。
まともに三井先生の顔が見られず、私はそっと布団に入ると彼に背を向ける形で横になった。
「杏奈」
あの夜と同じ欲望を秘めたその声に全身が無意識に反応する。
背中で彼を意識してしまい身動きができない。
「振り返らなくていいから、そのまま聞いてくれ」
ドクンドクンと心臓が激しく脈打つ。
何を言われるのだろうと不安でたまらなくなった。
「本来ならもっとちゃんとした場所できちんと話すべきなんだけどな」
そんな言い方をされ、余計に気になって変に体に力が入った。
「あ、あの」
「……」
なかなか言い出そうとしない無言の三井先生から、背中越しに緊張感が伝わってくる。
どんな状況でも決して揺らがず、自信に満ち溢れている三井先生が何をここまで遠慮しているのだろう。
それほど言いにくいことなのだろうか。
「俺は」
ようやく口を開きかけた時、けたたましい音が部屋中に響いた。
『産科オペ室でコードブルー、産科オペ室でコードブルー!』
院内放送が流れ宿直室内の時間が一瞬止まる。