秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
産科オペ室で患者の命に関わる緊急事態が起こり、院内にいるスタッフに招集がかかった。
いつどこで起こるかわからない急変で、稀ではあるものの命の現場にはつきものだ。
「私は大丈夫ですから、三井先生はいってきてください!」
「すまない、戻ってきたらちゃんと話すから」
慌ただしく宿直室を出たあと、彼の足音はすぐに聞こえなくなった。
外でスタッフがバタバタと走り回る気配を感じながら、不安と緊張で押しつぶされそうになっていた気持ちが少し和らぐ。
手汗をかいていることに気がついて、さらには手のひらには爪の跡がくっきり残っていた。
どれだけ緊張していたのよ、私ってば。
三井先生が何を言おうとしていたのか気になるけれど、今はそれどころではない。
体調が安定していれば私も応援に駆けつけられたのに、今の私にはコードブルーの患者が無事に助かりますようにと心の中で祈るしかできなかった。
本格的にめまいがしてきて目を閉じていると、私はいつの間にか眠りに落ちていたのだった。
目が覚めたのは三十分ほどしてからで、空腹であるにも関わらず先ほどまでのようなめまいや気持ち悪さは消えていた。
恐る恐る上体を起こしてみたけれど、もうすっかりよくなった気さえする。
三井先生はまだ戻っておらず、私は着替えと小腹を満たすためにロッカールームへいくことにした。