秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「どういう意味だ?」
怪訝そうに眉をひそめながら、まっすぐに見つめられる。
「言葉通りの意味です。三井先生の邪魔をするつもりはありませんので。失礼します」
「あ、おい、芹沢」
私はうつむきながら足早にその場を立ち去った。
そうでもしなければまた期待してしまいそうになる。
業務に没頭していれば余計なことを考えずに済むので、あっという間に時間は過ぎた。
それでも院内で、ましてや同じ科で働く以上会わないようにするのは難しい。
業務上、密に連絡を取らなければならない場面ももちろんある。
この先私のお腹が目立ってきたら三井先生はどう思うだろうか。
タイミング的に自分の子どもだと少なからず疑うかもしれない。
問い詰められたら嘘をつけない私は、勘の鋭い三井先生に悟られてしまうに違いない。
彼がお見合い相手との将来を見据えているのであれば、幸せを壊すことになりかねないのでは?
産むと決めたのは私のエゴで、三井先生を巻き込むわけにはいかない。
だからこそこの子の存在を三井先生に知られてはならない。
私は無意識にお腹に手を当てた。
何があってもこの子は私一人で立派に育ててみせる。
固くそう決めた私は、翌日早速行動にでたのだった。