秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「順調に育ってるね。赤ちゃんもすごく元気ですよ」
「よかった、ありがとうございます」
院長先生から赤ちゃんが元気だと知らされた女性の顔がほころぶ。
「では台をおろしますね」
私は声かけをしながら足元で処置台を操作した。
この町にひとつしかない小さな産院で働き始めて一週間。
最初は慣れない産科での業務に戸惑ったものの、今では大まかな流れをつかんだので多少は動けるようになった。
従業員は七〇代の初老の院長先生の他に、六〇代の女性事務員がひとり、五〇代の助産師がひとり、そして看護師の私の計三人。
大学病院とは比べものにならないほど小規模の産院だからなのか、ゆったりとした穏やかな時間がここには流れている。
息吐く間もないほど慌ただしかったこれまでの日々が嘘みたいだ。
「芹沢さん」
「は、はい」
ついぼんやりしていると、院長先生が私の顔を覗き込んだ。
いけない、仕事に集中しなきゃ。
「体、ツラくないですか? 体調が優れないようならすぐにおっしゃってくださいね」
院長先生は普段から物腰が柔らかく、常に妊婦である私の体調を気遣ってくれる。