秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
にこやかな上に穏やかで、院長先生の人柄が良いのはひと目でわかった。
直感でこの産院を選んだのは間違いではなかったし、一人一人、ゆっくり関わり合える時間もあるため、やりがいを感じる。
「ありがとうございます、最近はつわりも落ち着いたので大丈夫です」
「そうですか。でも無理は禁物ですよ」
「はい」
院長先生だけではなく、事務員の小園さんも助産師の滝野さんも、こちらが恐縮してしまうほどみんな優しい。
患者からも評判が良いらしく、わざわざ隣町から妊婦健診に通う人もいるみたいだ。
最初の頃はどうなるかと思ったけれど、この町に来て本当によかった。
「今日の夜は予定を空けておいてね。芹沢さんの歓迎会をするから」
「ふふふ、滝野さんったら何度目の歓迎会よ。ただあなたが飲み食いしたいだけでしょう?」
「あら、バレちゃいました?」
「芹沢さんは妊婦さんなんだから、少しは気遣わなきゃ。ねぇ?」
「いえ、大安さんのお料理は美味しいですし、お誘いなら大歓迎です」
二人はよそから来た私を、地元の色んな場所へと連れ出してくれた。
その中でも産院から徒歩数分のダイニング居酒屋、大安は二人の庭と言っても過言ではなく、毎週のように顔を出している。