秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「じゃあ今夜は終わったら芹沢さんも一緒に。ね?」
「はい、楽しみにしています」
小園さんと滝野さんはよそ者の私の事情を深く詮索してくることもなく、ずいぶん年が離れているけれど一緒にいて居心地がいい。
それに店の料理は妊婦に優しい薄めの味付けで、素材も地元で採れた新鮮なものだけを使用しているらしく、健康志向の人に向いている。
だから夜の予定は単純に楽しみでもあった。
「それでは、カンパーイ!」
小園さんと滝野さんはビールを、私はウーロン茶を手にそれぞれグラスを交わすと、カチンと小気味いい音を立てた。
「うーん、仕事終わりの一杯はやっぱり最高ね」
「ええ、これのために働いていると言っても過言ではないわ」
毎回恒例の同じやり取りから、しばらくは他愛もない話が続いた。
二人は私にもわかるように話してくれて、だからこそ疎外感を感じずに、一緒にいられる。
実をいうと最初のうちは気後れしていたのだけれど、二人の気さくさにいつの間にか安心させられて気がつくと打ち解けていた。
「いらっしゃい、お姉さま方」
気前のいい大安の店長が、突き出しの茄子の煮浸しの皿を私たちのテーブル置いて行く。
「あらー、今日もイケメンね。安成くんは」
「あはは、そりゃどうも。漬物はサービスです。どうぞごゆっくり」