秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「す、すみませんっ」
とっさに繋がれた手をほどいて深く頭を下げる。この状況で三井先生の存在を忘れかけていた。
「ありがとうございました」
理由はどうあれ助けてくれたんだよね?
「あの様子だと、まだ諦めたわけではなさそうだな」
短く吐き出された息と一緒に懸念するような声がする。
「そうですね、でもご心配には及びません」
私のプライベートに三井先生を巻き込むわけにはいかない。私ひとりで対処しなければ。そう気合いを入れて、患者の病室へと歩を進める。
だが、肝心の三井先生はそこから動こうとしない。
「回診されるんですよね?」
「いや、午前中のうちに済ませた」
え?
そうなんだ。
だとしたら、さっきのは私を助けるためだけの口実だったの?
「美人というのも考えものだな」
「やめてください」
周りがそういうイメージを作って勝手に騒ぎ立てているだけなのだから。
三歳年上の兄を美形だなとは感じるけれど、自分に至ってはよくわからない。
「芹沢」
「はい?」
「ひとつ、提案がある」
妖しく微笑む三井先生を見て、なぜだかものすごく嫌な予感がした。