秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「この町で取り上げたといえば、若先生もそうよね」
「若先生? 誰ですか?」
焼き鳥の串を口へ入れて頬張る。ジューシーな醤油の味と、柔らかい鶏肉がマッチした旨みが口いっぱいに広がった。
「関根院長のお孫さんよ」
「院長先生のお孫さん、ですか」
先生と呼んでいるくらいだから、医者をしているのだろうか。
「ええ、そうなのよ。めったに帰ってこないんだけど、これまたいい男なのよー!」
「そうね、うっとりするほどよ。あれは誰が見ても惚れ惚れしちゃう」
二人は程よい感じでお酒が進み、酔いも回ってきゃあきゃあといつにも増して盛り上がる。
聞いているだけで私も楽しかった。
「芹沢さんはずっとこの町で暮らすの?」
赤い顔をした小園さんが私に話を振る。
「そうですね、そのつもりです」
「そう、嬉しいわぁ」
そんな風に言ってもらえるだけで私も嬉しい。歓迎されているようで居心地がよかった。
できればこの先もずっと、この町で静かに暮らして行きたい。
胸の奥深くに潜む感情に蓋をして、この子と二人、笑顔を忘れずにやっていく。それだけが今の私の願いだ。