秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「いらっしゃいませ」
無事に勤務を終え、どうしてもここのだし巻き卵が食べたくなって一人できてしまった。
いつも三人だったせいかドアを開ける時は緊張したけれど、安成さんは変わらない笑顔を出迎えてくれた。
「珍しく今日は一人なんですね」
「ええ、そうなんです」
「カウンターへどうぞ」
席へと案内され、コートを脱いでハンガーにかける。店内は暖房が効いていて暖かかった。
外との温度差にまだ慣れず、冷たくなった手と顔がじんじんする。
「お飲み物はいつものでいいですか?」
「はい」
「あとはだし巻き卵ですよね?」
「すごい、よくわかりましたね」
「毎回注文なさってくださってますから」
私もすっかり常連客っぽくなったなぁなんて、しみじみ思う。こうして安成さんと気軽に会話できるようになったのがその証拠。
鯛飯と鶏の甘酢あんかけも注文し出てくるのを待つ。
店内には静かなBGMが流れ落ち着いた気持ちにさせてくれる。
普段はもっと賑やかだから、今日みたいな日は珍しい。
「今日は特別冷えるしお客さんも少ないだろうから、ゆっくりしてってください」
「ありがとうございます」