秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「お腹もずいぶん目立ってきましたね。予定日はいつですか?」
「来月末なんです」
私はとっさに腹部に手を当てた。
するとポコっと元気よく蹴り返してくれ、何気ない些細なことに温かい気持ちにさせられた。
胎動を感じるようになってからというもの、毎日のように幸せを与えてくれる。
「まだ一ヶ月以上先なんですね。出産って、女性はやっぱり怖いもんなんですか?」
キッチンで手際よく作業しながら私にも話を振ってくれる。特に何を話すわけでもない話し相手がほしいと思っていたから、安成さんがくれる距離感はちょうどいい。
「怖いけど、会えるのは楽しみですね」
何気ないトークは続き、しばらくすると料理が順番に出てきた。
大安のだし巻き卵はふわふわでとても美味しく、一度食べたらクセになってしまうほど味付けも絶妙だ。
「ふふ、わかったわかった。美味しいって言ってるんだね」
お腹の子もここのだし巻き卵をよっぽど気に入っているのか、胎動で喜びを表現してくれる。
「いたた、わかった、わかったから」
一人クスクス笑う私を、安成さんは不思議そうに見つめた。
「すみません、この子も安成さんのだし巻き卵が好きみたいで」