秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

「怖い? どうして?」

「ずっと目を覚まさないし、見ていることしかできない自分が嫌なんです。でも何をしてあげたらいいのかなんてわからない……だから」

次第に涙が込み上げた。これまで必死に抑えていた感情が今にも爆発してしまいそうだ。

「そっかそっか、優しいんだね、きみは。それに頑張りやだ」

なんて上品に笑う男性なのだろうと思った。それと同時にドキッとした。

「大丈夫だから、お母さんを信じてあげて。それにきみが顔を出さなきゃ、お母さんは寂しいんじゃないかな」

「それ、は……」

そうなのかもしれないけれど体が動かない。本当は誰かにこんな風に言ってもらいたかったのかもしれない。

「私……本当は記憶の中の母が薄れていくのが怖いんです。元気だった頃の姿が幻のようで……今の姿が現実なんだと思うと、とてもじゃないけど受け入れられなくて」

母が倒れてから誰かにこんな風に弱音を吐くのは初めてだった。

涙があふれて止まらず、ブレザーの裾で目元を何度も拭う。

そんな私を見た三井先生は、頭をポンッと優しく撫でてくれた。

「気を張っていたんだろう。思いっきり泣くといい」

「す、すみません……っ」

この私が人前で泣くなんて、自分でも信じられなかった。

三井先生と一緒にいる空間は居心地がよく、私の涙を三井先生の指先が温かく受け止めてくれた。

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