秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
結局、三井先生とはそれっきりになったのだ。
最後に会った日、病院の外に出ると雪が舞っていた。
底冷えするほどの厳しい寒さを、今でもはっきりと覚えている。
「懐かしいなぁ」
あの日から私の中で三井先生は特別な人になった。この感情をなんて呼ぶのかはわからない。
看護師の道に進んだのも、勤務先に三井先生がいる病院を選んだのも、すべてはまた会いたいと思ったから。
再会した時すぐにわかった。私は三井先生に恋焦がれていたのだと。
認めてしまえば簡単で、なぜあんなに忘れられなかったのか、すんなり納得することができた。
しかし再会した三井先生はすっかり変わってしまっていたのだけれど……。
今となっては全部がいい思い出だ。
この子がいたから、心からそう思えるようになった。
「わ、吹雪いてきた」
海沿いの道のバス停の軒先で立ち止まる。こんなに降ってくるとは思わなかったので、雨具は何も持っていない。
しばらく様子を見ていたけれど、雪は止むどころか、ますます勢いが強くなっていく。
家まであと少しなのに困ったなぁ、どうしよう。
視界が悪い中、無理して徒歩で帰って転ぶのも怖い。かと言って、ずっとここにいるわけにもいかないし、どうしたものか。
「芹沢さん」
一台の車が走ってきたかと思うと、路肩に止まり、中から人が降りてきた。