秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

「や、安成さん?」

「ああ、よかった。やっぱりここだったんですね」

「どうしてここが……?」

安成さんは私の前まで走ってくると頭の雪を手で払う。そしてにっこり微笑んだ。

「芹沢さん一人だったし、雪が強くなってきたから心配で追いかけてきたんです。僕の車でお送りするので乗ってください」

「で、でも……」

「妊婦さんをこの雪の中一人で返したとなると、店の信用問題に関わりますから。どうぞ」

私は素直にお礼を述べ、厚意に甘えることにした。

困っていたのは事実で、体も冷えてきていたから正直ありがたかった。

「本当にありがとうございました」

「いえ、気にしないでください」

車ですぐの距離を送ってもらうのは気が引け、なんだかすごく申し訳なかった。

「また店にきてください」

「はい、必ず」

そうすることで恩返しになるよね。

私はよくよくお礼を言って車をおり、帰路についたのだった。

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