秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
まだ熱が高いせいか頭がぼんやり重い。でも院長先生の言葉は胸にスッと溶け込んで、不安な気持ちを和らげてくれた。
「とにかく今は余計なことは考えずに、ゆっくり休んでいてくださいね」
「ありがとう、ございます」
「あ、そうそう。芹沢さんをここまで連れてきたのは安成くんなんですよ」
「え、安成さんが、ですか?」
「きっともうすぐ戻ってくると思うので、そばにいてもらってください。あと落ち着いたらご家族の方にも連絡してくださいね」
院長先生はそう言い残すと午後からの診察があるため、病室を後にした。
まさか安成さんが連れてきてくれただなんて信じられない。それに妊娠して体重が七キロも増えたのだから、相当重たかったはずだ。
ああ、合わせる顔がない。
「失礼しますね」
「や、安成さん、申し訳ありませんでした」
「どうしたんですか、いきなり。っていうか、目が覚めたんですね」
私の無事を確認した安成さんが安堵の息を吐く。店の外で会うのはこれで二度目だ。
病院に縁がないらしい安成さんは、落ち着かないのか辺りをキョロキョロ見回す。
「あ、そうだ、病院からの書類に保証人の名前を書く欄があるんですけど、どなたかご家族は来られます?」