秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています
「夢に向かって頑張る彼女の姿をすぐそばで見てきた僕は、彼女に重荷を背負わせたくなかったんですよね」
安成さんはまだ彼女に未練があるのだろう。
私には安成さんが真実を告げなかったことを後悔していると言っているように聞こえた。
「連絡は取っていないんですか?」
「こっちに引っ越してくる時、過去を精算したくて何もかも変えたんです。なので、今はさっぱりですね。彼女も僕もSNSすらしていませんし、今どこで何をしているのかはわかりません」
「そう、ですか。それはつらいですね」
「この前体調が悪くなった時、彼女の存在が大きかったことに初めて気づかされました。もう大丈夫だと思っていたんですけど、やっぱりまだだめみたいです」
安成さんがそこまで言うということは、素敵な人だったのだろう。そして安成さんが彼女に言えなかった気持ちも、私には痛いほど理解できた。
「もう一度、会われてみてはどうですか? その方がいいと思います」
引っかかる部分があるから、前に進めずにいるのかもしれない。
余計なお世話だとわかっているけれど、そう言わずにはいられなかった。
「そんな、今さらですよ。芹沢さんは?」
「え?」
「今この空間には二人だけですから、ここで聞いたことは他言しないと誓います。抱えているものがあるなら、吐き出してくれていいですよ」
「そんな、私は、大丈夫です」