秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

「俺に見惚れてたのか?」

「ち、違いますよ」

「ムキになるなよ、冗談だ」

そう言ってクスクス笑う余裕たっぷりな三井先生。

三井先生は今や全国でも名高い有名外科医だ。

海外でも活躍している有名な脳神経外科教授のいるこの大学病院で、その医師に指導してもらいながら経験を積んだのだ。

磨きに磨かれたその腕は、宮花大学附属病院でも幅広く生かされ、全国各地で手術が困難だと言われた患者の命を多く救っている。

外科医としての腕は認めるけれど、プライベートではなんというかノリが軽い。

人と話す時の距離が近すぎたり、よく病棟内の看護師と軽口を叩いて談笑している姿を目にする。

講義にきているときは真面目な先生だと思ったのにちがったらしい。

やめやめ、三井先生の冗談を真に受けて動揺するなんてどうかしている。周囲に視線を巡らせると、思いのほか人が少なくてホッとする。

休憩中にまで注目されたくないもんね。

「そろそろこの前の返事を聞かせてくれないか」

「ごほっ!」

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