秘密の出産をするはずが、エリート外科医に赤ちゃんごと包み愛されています

陣痛が強くなってきて耐えられないようになると、話どころではなくなった。

「大丈夫か」

「大丈夫、です。私は一人で」

「どうしてそう強がるんだ。俺にくらい弱音を吐いてもいいんだ」

「うっ、くっ」

必死に痛みに耐えていると遠慮がちに手が伸びてきて、背中をさすってくれた。

温かい手の温もりのせいなのか、陣痛の痛みのせいなのか。涙がじんわり浮かんだ。

この子はあなたの子だと、真実を打ち明けて楽になるべきなのだろうか。

三井先生にはとっさに父親ではないと言ったけれど、それはこの子の存在をなかったことにしようとしているのと同じなのではないだろうか。

そう考えると、不意に胸が痛んで張り裂けそうになった。

「私には構わず、三井先生は婚約者と幸せになってください」

言ったすぐ後から後悔した。本当はそんな風に微塵も思えない。

「婚約者?」

キョトンととぼけるような顔で首を傾げる三井先生。

「とぼけても無駄です。ちゃんと聞いたんですから。着物美人とお見合いをしたと」

「着物美人? ああ。しかし、どこの誰にそんな話を?」

「それは……」

偶然ロッカールームで聞いたのだと、なぜか言葉が出てこない。今になって思えば噂話を鵜呑みにしたようなものだ。

信憑性のかけらなど何一つない。それでもその時の私はいっぱいいっぱいだった。

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