グレーとクロの世界で
触れられない温もり(夏音side)
次の日の朝、一人で目覚め、一人で準備して学校に行く
お母さんは当たり前のように家にはいない
お父さんは事件に巻き込まれて死んだということは聞いている
その犯人は捕まっていない
どうやら、私はその前後の記憶が欠落しているらしい
それによって支障を来たしたことは無かったから、あまり気にしないようにしているけど、お腹に残った覚えのない傷が嫌でも記憶をくすぐる
学校に着くと、あちこちから本田くんの名前が聞こえる
1年生だけではなく、先輩達からも聞かれるその名前は、なんだか芸能人のようだ
「夏音、おはよ!」
いつもの様に朝からテンションの高い香澄がやってきた
「おはよ…。」
「ねぇ、本田くんって凄い人だったんだね。」
凄い人なのは何となく感じていた
どういう意味ですごい人なのかは知らないけど、これだけ色んな人に知られているのは凄いことなんだろう
「そうみたいね。」
「知らないの?夜月(よづき)っていう暴走族の総長やってるんだって。歴代最年少だからって結構伝説の人みたいだよ。」
「へー。そんなのでこんなに騒ぐのね。」
だからあの時あんなこと言ったのか
私は知らなかったけど、本田くんが総長という話は結構有名みたい
昨日は、みんな確信をもてなくて黙ってたみたいだけど、それが真実だと分かった途端この騒ぎだ
昨日、本田くんは私に「怖くない?」って聞いたのは暴走族だからってことね
確かにあのオーラは普通じゃなかった
でも、怖いだなんて1ミリも思わない
「当たり前でしょ!夜月って言ったら暴走族の中でも有名だもん。その総長だなんて、騒がないわけがない。名取くんも幹部みたいだし。」
だからあんなに仲良かったのか
というか、本田くん可哀想に
まだ来てないみたいだけど、来た瞬間地獄ね