グレーとクロの世界で

この空気、なんか気に食わない

ここはあなた達だけの教室じゃないんだけど

殺気ばっかり出して、そんなにみんなを怯えさせたいの?


「殺気、閉まってくれない?香澄怖がってるし。」


「あっ、ごめん!」


名取くんは殺気が出ていること自体気づいてなかったのか、謝ってきた

名取くんは香澄に好意があるのか、チラチラ香澄を気にしている

まぁ、香澄は可愛いし、正直モテる

不機嫌な私が隣にいるせいで誰も声を掛けてこないんじゃないかって思うくらい男ウケはいい

それに、香澄も名取くんが気になっているのだろう


「えっ?!こ、怖くないし!」


強かってる香澄が、今はいつもより可愛く見える

目が若干泳いでいるのは気づかなかったことにしておこう


「大変ね、暴走族の総長と幹部ってだけでこんなに騒がれて。」


私は本心を言っただけなのに、名取くんもポカーンとした顔になった

そして、私の顔を穴があくんじゃないかってくらい見つめている


「何よ、変な事言った?」


そう言った瞬間、名取くんは豪快に笑いだし、本田くんは変わったものを見る目で私を見つめてくる

なんだか馬鹿にされてるみたいで腹が立つ


「あー、ごめんね、笑っちゃって。でも馬鹿にしてる訳じゃなくて、なんて言うのかな……。真鍋さんみたいなこと言う人珍しくてさ。」


珍しい?

普通のこと言っただけじゃない


「俺らは暴走族で、しかも幹部以上。それだけで地位が欲しくて色んな奴が寄ってくる。もしくは、怖がって俺らを避ける。そのどちらでもない行動をとる人は俺らにとっては貴重ってわけ。」


なるほどね

面倒くさい世界で生きてるのね

でも、私は暴走族だろうとなんだろうと関係ないし

そもそも人と関わりたくない

1人が楽だから


「私には関係ないから。」


また、私はこうやって人を突き放す

私は一人でいたいし、友達とか仲間とか深い関係になりたくない

私には怖いものはほとんどない

でも、一つだけ怖いものはある

それは

人の温もりだから……

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