グレーとクロの世界で
「いいから、来て下さい。」
「いや、ちょっと……っ!」
ガチャ
「おっ、凪斗おかえりー。って、なんで真鍋さんいんの?そんでなんでびしょ濡れ?」
「おかえり……。」
「おっす。」
いつも通りテンション高めの名取くん
その他に私の知らない人が二人居た
「繁華街で会ったので連れてきました。もともと近いうちに連れてくるつもりでしたし。」
「あれ本気だったのか。」
「へー。凪斗のお気に入りちゃんね。」
「誰……?」
なんだか個性的なメンバーらしい
言葉一つ一つにその人の個性を感じる
「あっ、真鍋さんに紹介するね。ここは、月夜の倉庫で、ここは幹部室。奥には総長室もあるよ。そんで、総長が凪斗。俺、名取碧が幹部で、もう1人の幹部がこの倉本弦輝。弦輝の隣にいるのが副総長の濱塚慧史。
それで、この子が真鍋夏音ちゃん。俺らと同じクラスの子。」
総長が本田くんで、副総長が濱塚くん
幹部が名取くんと倉本くんの2人
まとめ役っぽいお兄さん的存在が濱塚くんで、人見知りそうなのが倉本くん
そんな感じかな?
「何か質問ある?」
質問も何も、全てが分からないから何がわからないのかも分からない
それで、なんで私はここに居るの?
「いえ。特にありません。
本田くん、なんで私を連れてきたの?」
「言いましたよね?一人にしないって。こいつらは真鍋さんを仲間だと思ってくれます。あとは、真鍋さんがこいつらを信じて下さい。」
私は、一人じゃないの……?
家でもずっと一人なのに、もう孤独じゃなくなるの……?
自分の気持ちを相手に伝えるのが苦手な私は、戸惑いを隠せていないだろう
「むっ無理よ。私は望んで一人でいるのよ?」
動揺が隠せていないのはわかってる
でも、強がることしか知らないの
「一人を望んでる訳では無いでしょ?真鍋さんは、人の温もりを知らないだけです。そこから逃げてるだけですよ。」
目を見てそう話す本田くんは、私の目を捉えたまま離さない
まるで、嘘をつくなと言わんばかりに真正面からぶつかってくる
「私は別に逃げてなんか……っ」
「俺は、真鍋さんと仲間になりたいと思っています。」
仲間……?
仲間って、そんな温かいものに私が触れていいの?
記憶が欠けた不良品の私が…?
そんな簡単に仲間になれるものなの?
でも、そんなのダメだよ
香澄とは4年目の付き合いになるけど、未だに心を開けない
記憶のない私にはどんな秘密があるかも分からないし……