グレーとクロの世界で
ガラガラ
「あっ……。」
見てはいけないものを見た気分だ
ドアを開けると目の前に本田くんと名取くんがいた
「あっ、真鍋さんおはよー。」
「おはようございます。」
「……おはよ……。」
軽く挨拶だけ返して、私は避けるように屋上に向かった
雨が降り続く外は誰も来るはずがない
横殴りの雨を避けられそうな場所はなかった
仕方ない、保健室行くか……
キーンコーンカーンコーン
鐘が鳴り響く校内は静まり返り、廊下には誰もいない
そんな廊下に私の靴音だけが響く
保健室なんていつぶりだろう
でも、今日はここしかサボれそうな場所が思い浮かばない
コンコン ガラガラ
「あら、どうしたの?」
「体調悪くて。ちょっと寝かせてください。」
「熱は?測った?」
面倒臭いな
保健室の先生ってこんなにめんどくさかったっけ?
「いいえ。」
はいっと渡された体温計を挟むと、思ったよりすぐ音が鳴った
38.7
そう表示された文字にさらに具合が悪くなった気がした
「あらー、よく学校来たわね。病院行く?」
「いえ、少し寝ます。」
「分かったわ。じゃあ奥のベッド使ってね。私これから会議でしばらく帰ってこないから、ゆっくり休んでね。ドアに札かけておくから誰も入ってこないと思うし。」
「分かりました。」
そう答えると、急ぎ足に保健室から出ていった
誰も来ないのは都合がいい
静かだし、ゆっくり寝よう
ブレザーを脱ぎ、ブラウスのボタンも2つ開けた
一応カーテンを閉め、布団に潜り込む
教室で眠れなかったのが嘘のように、布団に入った瞬間意識が薄れ始めた
あー、しんどい
そう誰かに言えたらどれだけ楽だろう
体はボロボロ
心もボロボロだ
最近の私の生活には刺激が多すぎる
スーッと意識が吸い込まれるように、私は目を閉じた……