グレーとクロの世界で



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夢を見た



誰かが私の手を握っている夢



手が暖かくて、なんだか心まで暖かくなる

私の手を優しく包み込むように握っているその手が、少しだけ力が緩んだ気がした


ゆっくりと手が離れ、温もりが離れていく


誰でもいい、そばにいて……


「行かないで……」


無意識に発した声に、その誰かが答えるようにもう一度手に温もりが戻ってきた

また心に温かさが戻り、幸せな気持ちになる


「行かねぇよ。」


そう聞こえた気がした

これを最後に夢は途切れた……





ブーッブーッブーッ


枕元に置いてあったスマホのバイブで目を覚ました

2時間以上寝てたみたいだが、体の怠さは相変わらずだ


ブーッブーッとなり続けるバイブにイライラし、画面を見ると


お母さんからの電話だった


出るか……


「もしもし……。」


「夏音?授業出てないって聞いたけど、何やってるの?」


何って、あなたと電話してますけど?

というか、いつもは電話なんてしないくせに、そんなに自分の顔が大事?


「保健室で休んでる。」


「休むほど具合悪いの?これだから今どきの子は……。いい?ちゃんと授業には出なさい。成績落としたらダメよ?じゃあ忙しいから。」


そう自分だけ話して、直ぐに電話は切れた

休むほどって何?

39℃近く熱あるのでは足りないわけ?

勝手に電話してきたくせに勝手に切ってるんじゃないわよ


このままここにいても、また電話がかかってきそうだったから、とりあえず教室に戻ることにした


スマホの電源は消して、ポケットに突っ込んだ


頭痛は酷いけど、体の怠さは何だか慣れてきた気がする

イライラしながら、教室に戻ると、ちょうど4時間目が始まる時だった

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