グレーとクロの世界で
守りたいヤツ(凪斗side)
雨に濡れて帰った翌日、俺は風邪をひくことなく学校にいる
教室に入ろうとしたとき、目の前のドアが勝手に開いた
そこには気まずそうな顔をした彼女がいた
何処と無くいつもよりダルそうに見えるのは気のせいか?
その場は何事もなく終わったが、授業開始のチャイムがなった教室に彼女の姿はない
サボりか?
彼女がいない教室にいる意味もなく、俺も教室を離れ、第4音楽室に向かった
もしかしたら彼女がいるかもと少しの期待を抱いていたが、そこには彼女の姿はなかった
ここ以外にサボり場所になりそうな所は屋上か保健室だな
雨で屋上は使えないだろうから保健室か
俺は授業中で静まり返った廊下を歩き、保健室に向かった
扉には不在の札がかかっていたが、俺はなんの躊躇なくドアを開けた
廊下同様静まり返った保健室は、誰もいないように見える
奥のベッドのカーテンが閉まっているってことはそこにいるのか?
誰が寝ているかもわからないベッドのカーテンを開ける俺は、へたしなくても不審者だ
カーテンを少しだけ開けて中を覗くと、そこにはやはり彼女が眠っていた
俺はカーテンの中に入り、彼女を見ると、明らかに熱があるということに気づいた
なんでさっき気づけなかったんだよ…
「ん…」
起こしたか…?
いや、寝言か?
眉間に皺を寄せながら眠る彼女はあまりにも痛々しかった
苦しそうな彼女の手を握ると、体温の高さを直に感じた
今は寝かせてやるか
そう思い、手を離そうとすると、彼女が何か言った
「…。ぃで…。」
何度か小さく聞こえるその声は
“ 行かないで”
そう言っている
「行かねぇよ。」
その言葉に安心したかのように、眉間にシワがよっていた寝顔が少し穏やかなものになった
ギュッと少しきつく握り返した手を優しく包む
少しして彼女を起こさないように静かにカーテンから出ると、雨だった空は、雲ひとつない青空が広かっていた