グレーとクロの世界で
「わかった?私はあなた達暴走族と一緒にいる訳にはいかないの。」
「わからない。」
「はぁ…?」
「分からないって言ってるんです。」
何言ってるの?という顔で俺の顔を見ている彼女は、ただただ困惑しているみたいだ
そんな簡単に俺は逃がさねぇよ
「真鍋さんの話はわかりました。ですが、それが俺と一緒に居られない理由にはなりません。というか、俺がそんなの許しません。」
「じゃあ、私にお父さんを裏切れって言うわけ?」
「そうは言ってません。じゃあ、真鍋さんは、俺達が人を轢き殺すような集団に見えましたか?俺が、そんな最低な集団の一員に見えますか?」
言い返す言葉がないのか、彼女はついには視線を下に向けてしまった
そんなに俺らが信用ならねぇなら、最終手段だな
「俺が、真鍋さんのお父さんを殺した犯人を見つけます。」
警察では無理でも、俺ならそれが可能だ
これで、彼女がこっちを向いてくれるなら俺はなんだってやる
「ほんと…?」
「はい、俺、嘘はつかないって言いましたよね?」
「嘘はつかない主義って言ってたわね。でも、私は本田くんに嘘ついてるかもよ?」
「俺を誰だと思ってるんですか?これでも一応総長ですよ?人を見る目は養ってきたつもりです。」
「フフッ…そうだったね。」
やっと、笑ったな
その顔が見たかった
作った笑顔じゃないその顔を
「真鍋さん。
俺が必ず犯人をみつけます。だから、今みたいに笑っていてください。その笑顔を俺たちに、夜月に守らせてくれませんか?」
「本田くん…。」
「はい?」
「私を、助けて…っ。
私を、ひとりにしないで…。」
笑っていた彼女の顔は跡形もなく崩れ、涙を流す
そんな顔、もうさせない
俺の元に来たからには必ず笑顔にしてやる
「はい、わかりました。真鍋さんは、俺たちが必ず助けます。」
「ありがとう。」
そう言った彼女は、涙を流しながら優しく微笑んだ
こんなにも儚く綺麗だと思ったのは初めてだ
まだ完全ではない彼女に無理をさせた代償は、必ず払う
「眠っていいですよ。俺がついてますから。」
その穏やかな表情のまま、彼女は静かにまぶたを閉じた
彼女が深い眠りにつく頃、外は既に夕日が沈もうとしていた
そのあと車を呼び彼女を自宅まで送った
抜け目なく明日の予定を取り付けて、再び車に乗り込んだ俺はいつになく上機嫌だったのは誰にも教えてやらねぇ