グレーとクロの世界で
車で慧史に明日彼女を連れていくことを伝え、倉庫によることなく家に戻った
俺の家は、住宅街から離れた林の中にある
住宅街から離れている訳は、まぁ、後でわかる
「お帰りなさいませ。凪斗様。」
「あぁ、今戻った。親父は?」
「いつものところにいらっしゃいます。」
「分かった。」
俺は帰宅したその足で親父の所に向かった
やることが出来たからな
無駄にでかい和風の家は、どこか威圧感を放っている
迷路のような廊下を進み、1番奥の部屋の前に立った
「親父、入るぞ。」
サーッ
「おー、珍しいな。お前が来るといい予感が全くしねぇな。」
「その予感、多分当たってるぜ。」
「で、何があった?」
さっきまでの柔らかい雰囲気とは打って変わって、今度は威圧感のあるオーラに変わった
真剣な話をしに来た俺にとって、そう来なくては話が進まねぇ
「俺に、大事な女ができた。まだ一本通行だがな。」
そのうち必ず手に入れるけどな
「それはめでたいじゃないか。それの何が問題なんだ?」
「その女は真鍋夏音。まぁ、クラスメートだ。彼女には7年前から父親がいねぇ。それも、殺しが原因だ。」
“殺し”
その言葉に反応した親父は、目の色を変えた
「犯人は?」
「まだ見つかってねぇ。ここまで長引いている殺しだ。警察ももう当てにならねぇ。だから、こっち側から探りを入れようと思ってる。許可してくれるよな?」
「それは、本田凪斗としての言葉か?それとも“桜藍会時期代表”としての言葉か?それによっては話が違ってくるぞ。」
「桜藍会とは関係ねぇよ。大事な女だ。男として助けてぇんだよ。」
桜藍会
それはここ一体を占めている俗に言う極道だ
その力は強大で、警察も公認状態
裏の事件で手を貸したりもしている
それくらい俺たちは黒い事に手を染めることを嫌っている極道だ
まぁ、銃刀法違反には引っかかるが、そこは容認して貰ってる
裏の世界で武器なしじゃ勝ち目ねぇしな
警察は、裏の世界のことをそこまで踏み込めない
潜入捜査もしてるみたいだが、そんな簡単に情報を掴ませるほど裏も甘くない
もし、彼女の父親の事件に裏の奴らが関わっているなら、俺が探した方が適任だ
「大事なもんは自分で守る。」
「そうか。さすがは俺の息子だな。許可する。ただし、ここにいるのはお前の家族だ。家族が力を貸すのは当たり前だろ?組員としてじゃなく、家族として力を借りろ。いいな?」
「あぁ。絶対見つける。」
必ず見つけ出してやる
どんな手を使ってでもな
そう心に決め、俺は動き出した
待ってろよ
犯人見つけて、彼女が本気で笑った顔が見てぇ
今、組で抱えてる大きな仕事はない
組員に…いや、家族に彼女の話を親父の時と同じようにした
全員力を貸してくれと言わなくても乗り気だ
今日からが始まりだ
待ってろよ夏音