グレーとクロの世界で
……………………

はぁ、この学校広すぎ

何個か行ってみたけど、意外と人通りが多かったり、使用されてる形跡があったりと、なかなか決まらない

あと2箇所しか候補はない

今は2つのうちの1つの屋上に来ている

ここは、本当は避けたい場所

だって、夏は暑いし冬は寒い、雨降ったら使えないでしょ?

ガチャ

とりあえず入ってみようと思い、重たいドアをあけると、ドアの隙間から風が吹き込んできた


「寒っ。」


放課後で、誰もいない屋上はなかなかいい場所だった

景色もいいし、5階建てで教室が2階か3階にあるこの学校では、わざわざここまで階段を登ってくる人は少ないらしい

ここ、いいな

雨の日と冬以外はここにいよう

そう心に決め、もうひとつの候補場所に向かった


人気のない廊下を進み、私が向かったのは、第4音楽室

ここは使わない楽器や物品の物置状態になっていて、昔使っていたであろう、古いソファも置いてある

なかなかの穴場スポットだ

ここもいいけど、やっぱり、あの景色は捨てがたい

ここは第2候補にして、屋上に誰かいた時に使おう

もう陽が傾き始めて、そろそろ帰ろうと音楽室から出ようとすると、声が聞こえた


「ん……。誰……?」


ソファの影になって見えなかったけど、制服に身を包んだ男子がいた

その人を私は知っていて、その人も私を知っている


「寝てるところ邪魔してごめんなさいね。本田くん、であってる?」


そう、私の隣の席の本田くんだった


「あぁ、真鍋さんでしたっけ?こんなところでなにしてるんですか。」


それはこっちのセリフよ

そう思ったが、下手に口出すと面倒くさそうだから、そんなことは言わない


「学校を散策してただけ。ここ広いから。ここにはもう来ないから安心して。じゃあね。」


これ以上話すことはないと言わんばかりに早々に話を切り上げて本田くんに背中を向けた

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