グレーとクロの世界で
「ちょっと待って下さい。」
何なのよ……
こっちがさっさといなくなろうとしてるのに
「何?」
「真鍋さんさ、俺の事知らないんですか?」
はぁ?
さっき名前呼んだじゃない
それは知ってるってことを指すんじゃないの?
「知ってるわよ。本田凪斗くん。私の隣の席。」
「いや、そうじゃなくて。」
じゃあ何よ
この時の私の顔はきっと不機嫌全開だっただろう
「じゃあ、聞き方を変えます。俺が怖くない…?」
怖くないのかって?
何それ
「全然怖くない。」
この人何言ってるの?
私が怖くないと言ったことに、なんだか少し安心したような顔をした
「じゃ、私は行くわね。」
「はい、引き止めてすみません。」
今度はすんなり解放してくれた
なんだか拍子抜け
だが、本田くんがなぜ私にこんな事を聞いたのか、それは直ぐに分かることになる
それから私は、教室に荷物を取りに戻り、家に帰った
もちろん、私を出迎える家に、灯りはなかった