甘いのは、空間だけで充分
数日が経った。明日はバレンタイン当日だった。
板チョコなど、昨日買っておいた材料と自分のエプロンが入ったバッグを持って綾菜の家へ行き、チャイムを鳴らした。
「優香、いらっしゃい!」
ドアを開けた綾菜は、すでに黄色い花柄のエプロンをつけている。
「綾菜! ごめん、遅くなって!」
「大丈夫だよ」
さあ上がって、と言って綾菜はわたしを家に入れてくれた。
「材料、ちゃんと持ってきた?」
「もちろん!」
わたしは、靴を脱いで台所へ行き、チェック柄のエプロンをつけ始めた。
「優香、やっほ!」
奈子ももう来ていて、水色のエプロンを身につけている。
「じゃあ揃ったことだし、早速チョコ出して作ろっか!」
「オッケー!」
奈子は座っていた椅子から立ち上がって、わたし達は板チョコを出して作り始めた。