今夜も抱きしめていいだろ?
温子は高価そうなネックレスの重みに

日頃の仕事のストレスが一気に消し飛んだ。

予想外のプレゼントに舞い上がって現金なヤツ。

なんとでも言ってちょうだいな気分であった。

「純一さんは家業のお手伝いですよね?」

「はい、兄たちと分担しています。」

「そう。お身内でのお仕事っていろいろあるんじゃないかしら?」

「そうですね。僕は三男なのでやっぱり足を引っ張っているかも。」

「それなりに苦労あるのね。」

「あの、質問してもよろしいでしょうか?」

「何でもどうぞ。」

温子はサイフォン式のコーヒーをゆっくりと味わえる時間に幸せを感じた。

「温子さんが思う男性の第一条件とは何でしょうか?」

「そうね、手がきれいである、かな。」

「手ですか?」

純一にはピンとこない内容であった。

「手とか指先とか爪がきれいであることが絶対条件ね。」

「はあ。」

「その点、あなたや優一さんはクリアだわ。」

純一は温子の口から優一の名が出て

気分が悪くなりかけたが

自分も絶対条件にクリアしたことに喜びたいとも思った。

「クリアですか?」

「私は自分よりも爪の長い男性は論外ね。」

「なるほど。」

「それにとんがった長い付け爪ほど不衛生なものはないわ。」

「でもどうしてそんなに指先にこだわるのですか?」

「単純なことよ。その手でその指で触れられると思うときれいに越したことはないでしょ。」

「そうですね。」

「好きな男性にこんな風に触れてもらいたいと、女性なら誰もが思うことよ。」

「僕には盲点でした。」

「手がきれいなのは早川家の血筋じゃないかしら。」

「血筋ですか?」

「お父様も手がふっくらとしてきれいだったから。」

「親父の手も見たんですか?」

「私は顔よりもまず手から見るわ。」

純一はこのマイペースな温子の独特な一面を知ることができて嬉しかった。

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