今夜も抱きしめていいだろ?
純一はベッドルームに戻り温子を起こした。

「温子さん、起きてください。」

そっと肩をゆすった。

「ん?」

アルコールに強い温子でも昨夜の酔いは過去最高だった。

高級ホテルに一泊できると思えば

飲み過ぎても問題ない。

「ふあー、よく寝た。」

温子の大あくびを見て純一は親近感が増した。

「よかったら、お風呂どうぞ。」

「あら、ありがとう。」

「それから、昨夜はすみませんでした。何も覚えてなくて。その。」

「アハハ!最高に飲んだわね。」

そのあっさりとしたひと言に純一は温子という女性にますます惹かれた。

「じゃ、遠慮なくお風呂頂くわね。」

「ごゆっくりくつろいでください。」

と言った直後純一は目を見張った。

温子が目の前でバスローブをはらりと脱ぎ捨てたのだ。

「ちょっ、裸っ、温子さん!」

純一はあわててくるりと背を向けた。

「安心して、裸じゃないわよ、ネックレスは身につけているから。」

温子に肩を軽く叩かれて純一は背後に笑い声を聞いた。

「ネックレスは服じゃないよな。」

純一は独りごちた。

でも嬉しかった。

きれいな肌が一瞬視界をおおったことに。

昨日から二人で過ごした時間を思うと顔だけでなく胸も熱くなった。

「これって、どういうことなんだろう。」

不思議に思えてならなかった。

相手が温子だからか。

他の女性だったらこんな状況になるとは思えない。

ワイシャツとジャケット、パンツはクローゼットに吊るされていた。

温子の気遣いに感謝した。

着替えてから冷蔵庫の中身を見て

ミネラルウォーターがまだ1本残っていることを確認した。

オーダーしたルームサービスを待ちながら

テレビ台によけておいたフラワーアレンジメントをデーブルの中央に戻し

風呂上がりにすぐ水が飲めるようグラスとコースターもそろえてた。

「よし。」

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