今夜も抱きしめていいだろ?
「美味しかった。ご馳走さまでした。」

「温子さんは紅茶派ですか?」

「そういうことでもないけど、早川家のロイヤルミルクティーは特別ね。」

「僕としては嬉しい限りです。」

「チェックアウトは何時かしら?」

「そんなことは気にしなくて大丈夫です。」

「どうして?普通は10時とかでしょ?」

「決めてません。」

「決めてないって、どういうこと?」

「温子さんに合わせます。」

「はあ?」

ひゃ~!

お坊ちゃまは言うことが世間ズレしてるというか。

温子はアッサム茶の香りを喉まで吸い込んで

最後のひと口を飲み干した。

「それじゃ、お言葉に甘えてランチまで居たいって言ったら?」

「もちろん構いません。問題ないです。他に何かリクエストはないですか?」

「リクエスト?」

「何でもいいです。」

しばし考えた温子は自分でも口に出してから仰天した。

「純一に甘えたい。」

「えっ?」

「いいでしょ。今だけなら。」

「僕に甘えるって、一体どうすればいいですか?」

「つまり、ベッドで。」

「ベ、ベッド?」

純一は驚いてつい大きな声を出した。

「そう、大人でしょ。たいしたことないと思うけど。」

「温子さん、それはたいしたことあると思いますけど。」

「いいからっ!」

温子は純一の手を引っ張って立たせ

そのまま強引に手を引いてベッドルームへせかせかと歩いた。

「ちょ、ちょっと、待ってください。温子さん!」

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