今夜も抱きしめていいだろ?
「へぇ、おまえが午前様とは。」

純一がキッチンで水を飲んでいたら

良一がふらりとやってきた。

「僕でも外で飲みたい日があるんです。」

「どうでもいいけど、俺にも水をくれ。」

冷蔵庫からミネラルウォーターのボトルを出して渡した。

「ところで、優一の見合い相手はどうした?」

「温子さんですか?」

「温子って言ったっけ?」

「破談ですよ。」

「キツそうな女だったよな。」

「そうですね。」

「なんだ?純一、おまえでも腹が立つことがあるのか?」

「いくらでもありますよ。」

「ほおー、そりゃ初耳だ。」

「良一兄さん、からかわないでください。」

「おまえも女の一人や二人抱けば、どんだけ面倒くさいかわかるだろうよ。」

「そうですね。」

「なんだ?抱いたのか?」

「とにかく、女が面倒くさいかどうかは僕が決めることです。」

「そりゃそうだ。」

「じゃ、僕は休みますので。」

良一はキッチンから出ていく純一の背を見送った。

「まったく悪い女が付かなきゃいいが。」

良一なりに末っ子の弟の身辺を心配した。

なにせ早川家の嫁には気を許せないからな。

そこへ優一が帰ってきた。

「今夜いい女を見かけたんだ。」

良一はすぐ下の弟の話を熱心に聞いた。

「どこで?」

「ホワイトウィングのロビーだ。ブラックスーツがビシッと決まって惚れ惚れするほどのパーフェクトバディ。」

「マジか?」

「俺は女と一緒だったから声掛けられなかった。悔しい。」

「アッハッハッハ。」

「波打つロングヘアが女優みたいだったな。」

「惜しかったな。」

それが数分前まで純一と風呂を共にしていた温子だとは知る由もなかった。

良一は2階へ向かい

優一はシャワーを浴びにバスルームへ向かった。

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