今夜も抱きしめていいだろ?
温子は部屋で悶々とした。

「あー、自己嫌悪。眠れない。あんな風に帰ってくるべきじゃなかった。」

恐らく数日は引きずるだろう嫌な気分のままで日々をこなさなければならない。

過去の経験からして

ブチ切れた男とは絶縁が常であったが

相手が純一の場合気おくれした。

自分が間違っていたかといったらそうでもないと思い

では相手が間違っていたかといったらそれでもなく

元は何かといったら大おばあ様という存在だ。

やはり早川家は普通でない部分がとてつもなく深く複雑な環境にある。

純一がいうところの妻とは

早川家の嫁になるわけだ。

喉の奥に突き刺さったままなかなか取れないウナギの骨のようだ。

自分が自分でなくなくような立場に追い込まれそうで納得できなかった。

ただ純一が好きだという気持ちのままでいたかった。

彼の腕の中に飛び込んで愛されたいだけ。

ずっと恋人同士でいたい。

乙女チックな淡い恋心と現実がマッチしない状態にストレスを感じた。

甘い恋のままでいたい自分と

妻の座に迎えたい純一の想いとにギャップがあり過ぎた。

どうしたらいいのだろうか。

このまま冷めゆく出会いで終わるのだろうか。

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