今夜も抱きしめていいだろ?
良一は純一の様子がおかしいのをキャッチしていた。
優一にも弟に気を配るようそれとなく言っておいた。
親父とお袋はいつものごとく知らん顔だ。
大おばあ様に全てを任せっきりにして
楽な人生を選んだあの二人にはつくづく呆れた。
ビジネスも息子三人に重責を負わせ
レセプションやパーティーにだけは顔を出すという
いいとこどりの言動にも吐き気がする。
良一は可愛い二人の弟優一と純一にはなるべく負担をかけさせないよう
若さに見合った人生の楽しさを大切にしてほしいと願っていた。
「くそぅ。」
今週は多忙過ぎて酒も女も遠ざかっていた。
「この仕事量、どうにかなんねぇのかよ。」
アメニティとショップ系は純一が担当し
内装とアウトラインは優一が担当し
残る人事と規定、契約とセキュリティを良一が担った。
それは早川コーポレーションが所有するすべてのホテルのだ。
「無理だ。叔父たちに割り振るしかない。」
それを大おばあ様に垂れ込むと叱責を食らった。
「良一、早く有能な嫁をもらうんだね。それが一番の早道だ。」
モニター画面をいきなり切りやがった。
「けッ、何とでも言え、くそババア。」
良一はチェアの背もたれにふんぞり返った。
コンコンとドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
カチャリと開いて顔を出したのは純一だった。
「珍しいな、おまえがここに来るのは。」
「良一兄さん、今少し時間いいですか?」
「構わない。」
「ありがとうございます。」
「なんだ?改まって。」
「相談があるんですが。」
「相談?何の件だ?」
「良一兄さんは女性に詳しいと思うので、アドバイスをもらえたらと思って。」
「はっ?女?」
「はい。」
「で?」
「どうしたらいいのかわからなくなってしまって。」
「好きな女がいるのか?」
「はい。でももう無理かなって。」
「一体何がどう無理なんだ?喧嘩か?」
純一は良一の前で下を向いたまま眉間にしわを寄せて黙り込んだ。
「喧嘩するほど仲がいいって言うだろ。」
「でも修復不可能で。」
「赤の他人同士なんだ。意見が違って当然だろ。」
「そうですね。」
「恋人同士でも100%上手くいくことなんて有りっこない。そうだろ?」
「はい。」
「惚れた女なら悩んでも手に入れろ。」
「でもどんな風にもっていけばいいのか、僕には考えつかなくて。」
「あれこれ考えてる間に、他のヤツにかっさらわれるぞ。いいのか?」
「それは困ります。」
「なにもカッコ良く振舞わなくていいんだ。今の悩んでいるままの自分を見せるだけで相手がどう出るかだ。」
「そうなんでしょうか。」
「難しく考えなくていいんだ。おまえなりに花やホテルのスイーツを贈るとかやってみるんだな。」
「たったそれだけでいいの?」
「女はプレゼントに弱い。」
「女泣かせの良一兄さんが言うなら、僕やってみます。」
「おいおい、そりゃひどい言われようだな。」
「すみません。」
「いいんだ。寄りが戻ったら一度連れて来いよ。」
「はい、ありがとうございます。」
純一の明るくなった顔を見て
良一も内心ホッとした。
~ to be continued ~
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
ホントは弟思いの優しい兄良一が見守る中
純一と温子の仲直り編「恋のリードは彼女から!」も
公開中です。お楽しみいただければ幸いです。北原留里留
優一にも弟に気を配るようそれとなく言っておいた。
親父とお袋はいつものごとく知らん顔だ。
大おばあ様に全てを任せっきりにして
楽な人生を選んだあの二人にはつくづく呆れた。
ビジネスも息子三人に重責を負わせ
レセプションやパーティーにだけは顔を出すという
いいとこどりの言動にも吐き気がする。
良一は可愛い二人の弟優一と純一にはなるべく負担をかけさせないよう
若さに見合った人生の楽しさを大切にしてほしいと願っていた。
「くそぅ。」
今週は多忙過ぎて酒も女も遠ざかっていた。
「この仕事量、どうにかなんねぇのかよ。」
アメニティとショップ系は純一が担当し
内装とアウトラインは優一が担当し
残る人事と規定、契約とセキュリティを良一が担った。
それは早川コーポレーションが所有するすべてのホテルのだ。
「無理だ。叔父たちに割り振るしかない。」
それを大おばあ様に垂れ込むと叱責を食らった。
「良一、早く有能な嫁をもらうんだね。それが一番の早道だ。」
モニター画面をいきなり切りやがった。
「けッ、何とでも言え、くそババア。」
良一はチェアの背もたれにふんぞり返った。
コンコンとドアをノックする音がした。
「どうぞ。」
カチャリと開いて顔を出したのは純一だった。
「珍しいな、おまえがここに来るのは。」
「良一兄さん、今少し時間いいですか?」
「構わない。」
「ありがとうございます。」
「なんだ?改まって。」
「相談があるんですが。」
「相談?何の件だ?」
「良一兄さんは女性に詳しいと思うので、アドバイスをもらえたらと思って。」
「はっ?女?」
「はい。」
「で?」
「どうしたらいいのかわからなくなってしまって。」
「好きな女がいるのか?」
「はい。でももう無理かなって。」
「一体何がどう無理なんだ?喧嘩か?」
純一は良一の前で下を向いたまま眉間にしわを寄せて黙り込んだ。
「喧嘩するほど仲がいいって言うだろ。」
「でも修復不可能で。」
「赤の他人同士なんだ。意見が違って当然だろ。」
「そうですね。」
「恋人同士でも100%上手くいくことなんて有りっこない。そうだろ?」
「はい。」
「惚れた女なら悩んでも手に入れろ。」
「でもどんな風にもっていけばいいのか、僕には考えつかなくて。」
「あれこれ考えてる間に、他のヤツにかっさらわれるぞ。いいのか?」
「それは困ります。」
「なにもカッコ良く振舞わなくていいんだ。今の悩んでいるままの自分を見せるだけで相手がどう出るかだ。」
「そうなんでしょうか。」
「難しく考えなくていいんだ。おまえなりに花やホテルのスイーツを贈るとかやってみるんだな。」
「たったそれだけでいいの?」
「女はプレゼントに弱い。」
「女泣かせの良一兄さんが言うなら、僕やってみます。」
「おいおい、そりゃひどい言われようだな。」
「すみません。」
「いいんだ。寄りが戻ったら一度連れて来いよ。」
「はい、ありがとうございます。」
純一の明るくなった顔を見て
良一も内心ホッとした。
~ to be continued ~
ここまでお読みいただきましてありがとうございます。
ホントは弟思いの優しい兄良一が見守る中
純一と温子の仲直り編「恋のリードは彼女から!」も
公開中です。お楽しみいただければ幸いです。北原留里留