今夜も抱きしめていいだろ?
優一は自分の部屋に戻り

窓際に立って下にある見慣れた池に目をやり

程よく肥えた錦鯉が悠々と泳いでいるのを見てつぶやいた。

「あの女、俺たちには興味無しって顔だったな。」

デスクに向かって座り両腕を組んだ。

スマホが光った。

画面を見ると二三度会ったことがある女からだ。

出て来ないかというメッセージを無視したかったが

面倒くさいの一言で却下した。

すでに夕方近い時間だ。

祝日の夜は決まって一族だけの会食があり

先代からの絶対ルールになっていた。

メンバーは祖父母、父母、叔父叔母、従姉妹、俺たち三人と

別邸にいる高齢の曾祖母が現役の会長としてモニターで参加する。

「あの婆さん、まだ生きてんだ。」

毎月のようにある祝日の会食でモニターの向こうにいるのは

本当に生きた曾祖母なのか疑問があった。

かなり精巧なロボットかもしれないと思う自分に

うんざりとした気分だ。


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