桃色のアリス
「何よ」
女王様がムスっとしてこちらを睨んできた。照れてるんだろうなってことはお見通しだ。今日は伝えたい気持ちが勝って、茶化すことはしない。
「女王様」
ありがとう
「ありがとう。パーティー開いてくれて」
ありがとう
「ありがとう。育ててくれて」
ありがとう
「すごく、すごく嬉しいよ」
女王様に逢えて良かった。そう言うと女王様は少し赤くなって言った。
「……バカじゃないの……ほら、しっかり前見ないと階段から落ちるわよ」
私が慣れない事を言ったからなのか、それ以来顔を反らしてこっちを見ようとしない。金色の髪が、女王様の表情を隠す。
階段を降りると、黒髪の少女がこちらに駆け寄って来た。エメラルドと水色に染められたシンプルなドレスが、私とは対称的だ。
「アリス!!」
見慣れないドレス姿だったけど、直ぐに誰だか分った。リズだ。
「リズ!!」
「アリス、誕生日おめでとう」
「ありがとうリズ! 来てくれたんだ!」
「当たり前でしょ。私はアリスの親友なんだから。アリス、これ」
リズは手に持っていたものを私の前に出す。白い封に城の紋章がついた、これって……
「……招待状?」
「女王様、私にも招待状くださったのよ」
……女王様!ちゃんとリズにも贈ってくれたんだ。
私が呆けていると、リズはクスリと笑い小さな箱を取り出す。箱はピンクのリボンと白に金の模様が描かれた紙でラッピングされていて、凄く可愛い。
「アリス。プレゼントよ。受け取って」
「わぁ! ありがとう! ねぇリズ! 今開けていい?」
「もちろん」
リズから箱を受け取り、勿体ないと思いながらも紐解いていく。