桃色のアリス
逃げるように城の中に戻ると、終焉の曲が流れパーティーは終わりへと近づいていた。
ベランダの方を振り返るとチェシャ猫の後ろ姿が見える。
寒く、ないのかな?
フードコートがあるから平気なのだろうか。……チェシャ猫の背中。気のせいかもしれないけど、少しだけ寂しそうに見えた。
「チェシャ……」
「アリス!!」
ベランダに引き換えそうとすると、後ろから伸びてきた手に腕を掴まれ引き止められる。
「もう、探したんだから。パーティーも終わるから挨拶しろって。女王様が探してたわよ」
「挨拶……!!恥ずかしいよ!」
「我が儘言わないの!ほら、行かなくちゃ」
リズに引っ張られるがまま、舞台裏へと連行される。幕の影から覗けば、大勢の人達が会話を楽しんでいるのが見えた。
……こんな大勢の前で挨拶するの!?
「やだ!やだ!やだよー!」
「今日はアリスが主役なんだから仕方ないの!女王様に怒られるわよ!もう、泣かないで!」
「だってー!!」
こんな大勢の前で話したことなんてないんだもん!階段降りるのと話すのじゃ違う。
「あんた何年この城に住んでるの!?人前で話せるようにくらいなりなさい」
嫌がる私の意見などよそに、やってきた女王様に怒られる。
そしてほとんど無理矢理マイクを持たされ、ステージへと連れていかれた。大勢の人の視線が私に集まる。
……き、緊張する……
こんなときって何て言えばいいんだっけ!?なにか喋んなきゃ……!でも何を話せば……