桃色のアリス
3.出発の時間
次の日の朝。
旅支度を済まして急いで部屋を出る。出発の時間までもう時間がない。
早くジャックさんの所に行って、頼みごとをしないと!
再び赤と白のタイルの上を走る。いつも着ている濃いピンク色のエプロンドレスが揺れた。髪を上に上げて、昨日リズから貰ったプレゼントの赤いリボンで縛る。暫く走ると、いつもの場所にジャックさんが立っているのが見えた。
「ジャックさん!!」
「アリス殿!如何されましたかな?」
走ったので息が乱れてる。でも、要件は伝えなきゃ!
「これを枯れないようにしてほしいの……!!」
アネモネの花をジャックさんに渡す。
「アネモネ、ですかな?」
「大事なプレゼントだから、枯らしたくなくって……」
チェシャ猫から貰った大事な花。枯らすなんて勿体ない。
「ふむ。加工出来たのを渡すのはアリス殿が帰ってきてからになりますな。よろしいかな?」
『帰って』きてから。
「お願いします!」
「しかと承りましたぞ」
ジャックさんの微笑みと、その言葉を聞いてほっとする。これでチェシャ猫がくれた花は枯れない。
「ありがとう。ジャックさん」
「ホッホッホ、アリス殿のお願いなら力になりますぞ。安心してウサギを追いかけて下され」
「うん。絶対世界の崩壊を止めて帰ってくるから」
「では、アリス殿。お元気で。私は今日ここを任されているから見送りには行けませぬ」
「ここで十分だよ。ありがとう。ジャックさんも、お元気で」
ジャックさんと笑顔で握手を交わす。
「帰ってきたら、またトランプで遊んでね」
「もちろんですぞ」
「じゃあ、行くね。いってきます!」
ジャックさんに手を振って前を向く。そろそろ時間だ。女王様が待つ門へ急がないと。