桃色のアリス



困った顔をしたリズは近づいてくると、私の手をとる。


「アリス。私達はずっと親友、でしょ?」

「うん」


「早く帰ってきてね。私、待ってるから」

「うん、」


どうしよう。涙が止まらない。泣いてちゃいけないのに。さっき女王様に大丈夫、って言ったのに、リズの前だとどうしても気持ちを隠せない。


「ほら、情けない顔しないの。別に一生の別れじゃないんだから」

「だって、皆と離れるの寂しいんだもん……」


「もう、泣き虫アリスね」

リズがあたしの手を強く握った。


本当は、怖い。もしかしたら、ウサギを見つけられないかもしれない。こんな広い世界の中で、二人のどちらかを見つけ時計を止める。それがどんなに大変な事か、考えるくらいでゾッとした。


もしも私が時計を止められなかったら。もしも私が、二人のどちらかを選べなかったら。


崩れる世界。それは、彼女達との一生の別れ。崩壊が近づいてる今は危険なこともあると聞いた。だから旅に出て無事に帰れるかも分からない。


「大丈夫だよ。アリス」


チェシャ猫が不安を感じたかのように私の頭を撫でる。


「僕がいるから。最後まで案内するから。心配しなくていいよ」


その言葉を聞いたリズは、チェシャ猫の方に向くと、頭を下げる。


「アリスをよろしくお願いします」

「アリスは必ず守るよ。君にも約束する」


「そろそろ出発の時間よ」


女王様が制した瞬間、どこからか優しいメロディーが流れる。発生源は私の手の中だ。懐中時計から流れている。


「女王様、これ……」


女王様も驚いているようで、目を見開き時計を見つめる。


「私が持っていた時は一度も鳴らなかったのに」




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