桃色のアリス


馬の鳴き声と足音が遠退いていくのを聞きながら、部屋へと足を運んだ。迎えに来てくれたトランプ兵にお礼を言った後、部屋の扉を開ける。

待ち構えていたのは言わずもがな、積み重ねられた大量の宿題と、ハートのトランプ兵のジャックさん。
「アリス殿、ご機嫌は如何かな?」
「えへへへ! 元気、です

私の勉強を教えてくれる人は日や教科によって交代制になっている。ジャックさんが担当だと、一緒にトランプをして遊んだりするんだけど……

私の期待に応えるように、ジャックさんハートランプを取り出すと、器用にもパラパラと捲る。

幼い頃から私の世話をしてくれているハートのジャックさん。大のトランプ好きで、会うたびにトランプに誘ってくれる。楽しいからよく遊ぶけど、あまり遊んでいると女王様に叱られるんだよね。

「ではハートランプを、といつもなら始めるところではありますが、そうはいきませんぞ。アリス殿。用意はよろしいかな? 今日はみっちり勉学に励むのですぞ!」
「はい……」

流石に今日はそう都合が良くはいかないみたいだ。
素直に席について、山積みになった宿題に手を伸ばす。今にも崩れ落ちそうで、軽く触れただけで左右に揺れた。

う、これ一枚でこんなぎっしり。絶対今日中になんて終わらないよ! 喉まで悲鳴が出そうになったところで、コンコン、とドアを叩く音がして、続いてトランプ兵の声が私を呼んだ。
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