メーティスの猛毒

一 不審死

「大丈夫。私はあなたの味方です。あなたが責められるべきではない」

一人の女性がそう言い、ある人物を抱きしめる。その刹那、その人物から涙があふれ出した。それは止まることなく流れていく。

「あ、ありがとうございます！私……私……」

その人物は女性の背中に腕を回す。嗚咽が部屋の中に響いた。

何十分、二人は抱き合っていたのだろうか。女性が「ううっ！」とうめき声を上げた刹那、その体が崩れ落ちる。

「だ、大丈夫ですか！？誰かっ！！」

その人物は慌てて人を呼ぶ。すぐに数人の人が駆けつけたが、女性の脈などを調べて首を横に振った。



寄生虫学者である宍戸玲奈（ししどれいな）の助手をしている浜田透（はまだとおる）は、今日も変わらず朝早くに玲奈に叩き起こされ、犬たちの散歩に出かけた。

「もうすぐ研究所だな。……っておい！勝手に走り出すなよ！！」

犬たちが走り始め、透も慌てて走る。犬たちが突然走り出したり、玲奈に振り回されることでかなり体力はついた。